散るさくら残るさくらも散るさくら

「散るさくら 残るさくらも 散るさくら」

これは、良寛さんの言葉。

さくらに、無常をうまく託している。

散るさくらを惜しんでいるあなたも、また散るのですよ。

散ることも、咲くことも何も特別なことではないのですよと

良寛さんがつぶやいているような気がする。

この句に「いろは」を続けて読むと

「散るさくら 残るさくらも 散るさくら いろは にほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ」
(「散るさくら 残るさくらも 散るさくら 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰そ 常ならむ)

となる。

私たちは、無常の世界に住みながら、無常を知らない。

無常を知ることは、流れに逆らわずに泳ぐようなものだ。

無常を知れば、ただ生きることのすばらしさがわかる。

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いよよ華やぐ

桜も盛りを迎え、命を限りに咲き誇っている。

この時期、岡本かの子さんの

「年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐ命なりけり」

という歌を思い浮かべる。

半世紀も生きていると楽しみよりも、哀しみと親しくなるようだ。

咲く花よりも、散る花に心が寄り添う。

哀しみが昇華されて透明になるとき、命の華やぎを感じるのかもしれない。

 

この歌の作者は、49歳でこの世を去った。

小説が認められ、これから華やごうとした時だった。

かの子を桜に例えれば、染井吉野よりもしだれ桜の風情に近いような気がする。

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モノクロームフィルム

数年ぶりにモノクロームのフィルムを買った。

懐かしいNEOPAN400を2本。

使うかもしれないし、使わないかもしれない。

ブロニーサイズと呼ばれるフィルムは、6x6サイズで12枚撮影できる。

たった12枚。

デジタルカメラでは考えられない数字だ。

フィルムを手にしながら、撮影場所を考えている。

フィルムのにおいを思い出す。

シャッターを切ると、光がフィルムにしみ込む。

ハロゲン化銀が、光を捕まえ化学反応を起こす。

光と科学の力で、フィルムに像が定着される。

若い頃、暗室にこもっては、毎日現像をしていた。

手に残る定着液のにおい。

手にしむ込む現像液の色。

1本のフィルムが遠い思い出を紡ぎ出す。

 

ゆっくりとした時間、ゆっくりとした空間で、

このフィルムを使いたい。

12枚の一期一会。

 

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ウェストレベルファインダーには、左右の像が反対に写る。
ピントグラスに光が滲む。
眺めているだけで美しい。

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