熊野の友人が二人、久門太郎兵衛さんの所へ遊びに行った帰りに我が家に寄ってくれた。
久門太郎兵衛さんといえば有機農法の先駆けで、多くの農業指導者に影響を与えた方で、二人は、大阪にいるとき久門さんから農業を習っていた。
私も自然農で知られる川口由一さんに憧れ、影響を受けた時期もあったが、どうも農業には馴染めなかった。東吉野の山村に移り住んだときも、熱心に野菜を作ることをせず、あまり土に触れることもなかった。
馴染もうとして馴染めない、農の世界。私の周辺には就農者も多く、機会はいくらでもあったように思う。
吉野へ引っ越しをしてから、仕事も忙しくなり農のことを思うこともほとんどなくなったが、いつもこころの奥底では、農の存在を意識している。
命とか、自然とかを考えるときにいつも農が頭をかすめる。
自分の生き方を農業で実践している人に、強いあこがれを感じる。
いつか農と強く関わることがあるのだろうか。
農だけがすべてではないことは、分かっているのだけれど。
私には、私の出来ることがある。それは、農ではないのだけれど。
農は私の中の永遠の保留のような気がする。
土曜日は、夏のような日差しにも関わらず、花たちを美しく飾る光で満ちあふれていた。