ひとけの無い場所

ひとけの無い工場をぶらぶらと歩けるのも、田舎の特権かもしれない。

誰ともすれ違わない、里道を歩けるのも。

午後のひかりに畑の作物が光っている。

どこからか、沈丁花の香りがする。

 

ひとけのない場所を歩くとき、自分の人恋しさに気づく。

この頃の心もとなさは何なのだろう。

人恋しくて、ひとけの無い場所を歩く自分は何なのだろう。

痛みの日 そして再起の日へ

私たちはこの地震で、多くの尊い、かけがえのないないものを失ってしまった。

時間と人々の努力と、悲しみと笑顔、汗と涙で培われたすべてのものを失ってしまった。

この痛みは、自分のこころとからだの一部を失った痛みに等しい。

私のこの痛みは、世界が一つであることの証のような気がする。

かけがえのない世界の一部が失われた痛み。

私の周りにも、この痛みに耐えている多くの人がいる。

私は今、この痛みの中にあって、自分もまた世界の一部であることを強く感じている。

もし私たちが一つであるならば、

私たちの力と笑顔がいつの日にか、

かけがえのないものを失った人たちの笑顔と力になるかもしれない。

その時のために、笑顔が作れるような生き方をしよう。

その時のために、私は穏やかな呼吸をしよう。

その時のために、今の仕事をきっちりとやり遂げよう。

この長い再起への道程の途上に、私に出来ることがあると信じて。