一日だけのカフェ

吉野山の麓で、一日だけ、カフェ桜がオープンした。

日曜日の吉野山は、雪交じりの雨模様で餅米を蒸す薪の煙が色濃く見えた。

人が集い、花の噂をし、遅い雪を愛でた。

裏の山で椎茸をとったり、

餅をついたりした。

手が汚れると山水で洗い、

冷えるとぜんざいのお鍋で暖めることもできた。

どこにでもありそうで、見つからないとても貴重な時間。

ゆっくりと過ぎていく時間を、心ゆくまで楽しむことが出来た。

 

梅が美しく咲いている。

吉野山の桜は4月の中頃が見頃かもしれない。

 

二つの夕暮れ

夕暮れの難波を歩くのは、何十年ぶりだろう。

私が若かった頃より空が綺麗になったような気がする。

1人で歩く都会は少し寂しかった。

 

打ち合わせが終わって外に出ると、春の日がゆっくりと暮れかけていた。

明日香の夕暮れは、やさしくて静かで、空気が暖かかった。

1人でいることが心地良かった。

ひとけの無い場所

ひとけの無い工場をぶらぶらと歩けるのも、田舎の特権かもしれない。

誰ともすれ違わない、里道を歩けるのも。

午後のひかりに畑の作物が光っている。

どこからか、沈丁花の香りがする。

 

ひとけのない場所を歩くとき、自分の人恋しさに気づく。

この頃の心もとなさは何なのだろう。

人恋しくて、ひとけの無い場所を歩く自分は何なのだろう。