来る春よりも

来る春よりも、去る冬が愛おしい。

凛と張り詰める早朝の空気。

踏む霜の音。

低く射し込む光。

 

来るものよりも、去るものに心が残る。

去った日の長さが、これから来る日の長さよりも多いからだろう。

 

福西和紙本舗の光

仕事の縁がきっかけで、福西和紙本舗さんへ時々撮影にお伺いする。

福西さんの和紙は有名で、テレビや雑誌によく取り上げられていてご存じの方も多いと思う。

近年外国のデザイナーも福西さんの漉く和紙に注目している。

 

私はここでの撮影が好きだ。光をとても美しく感じる。

福西和紙本舗さんは人工の光が少ない。外からの光を上手く利用して作業をしている。

和紙の色と質感を正確に見るためだろう。

 

ガラス越しに、障子越しに、射し込む陰影がとても美しい。

福西正行氏

 

いつも快く撮影をさせて頂いてありがとうございます。

 

夕方の雪

雪がフロントガラスに当たっては後ろに飛び去って行く。

視界が白く煙る。

歩く人に、自転車を走らせる人に、

ゆっくりと、覆い被さるように雪がふる。

この雪を見ているとどこか遠くへ

知らない町へと旅がしたくなる。

いや、帰りたいのかもしれない。

どこか知らない町へ。

知らない場所へ、

帰って行きたくなる。

私が、私と出会う前の場所に。