アルボ・ペルトと出会えたことは自分の人生で大きな意味を持つ。
私がこのエストニア出身の現代音楽家から与えられた感性と霊感は、祈りという言葉と共に深く心身に沁みていった。
静謐で深淵、祈りと慈しみに満ちたペルトの音が私を満たすとき、私は深く静かに自己の内面に降下する。誤解を恐れずに書けば、遥かな高みに降下するというイメージに近い。
2000年に発売された「アリーナ」というCDは、今までとは少し違うトーンを持ちながら、その完成度は高い。
静謐という言葉ではなく、「静けさ」という言葉がふさわしい。
一音一音が丁寧に表現され、場を静けさで満たしていく。
器に喩えれば、白磁より青磁の味わいに極めて近い。