エルク、私は感じたよ。
あの日、エルクがエルクの犬としてのボディを離れていくのを。
少し苦しそうな息が、小さくて穏やかな呼吸に変わって
エルクのボディからゆっくりとエルクの魂が出て行くのを感じたよ。
エルクを抱きかかえながら、私はエルクがゆっくりとゆっくりと
身体から抜け出て、光となっていくのを
そしてその光が、私たちを包み、サテちゃんを包み、
この家を包み、そして空に
宇宙に広がっていくのを感じたよ。
犬としてのエルクの役割が終わり、また原始の宇宙
すべての始まりの光に戻ったのだね。
それからは、雨にも風にも道ばたの花にも
エルクの存在を感じることが出来るよ。
おまえは、とても大きな存在だったけど
それを超えて、もっと、もっと大きな存在になったね。
エルク、私は知ったよ。
この世界は、生まれることも、滅びることも
増えることも、減ることもないのだと。
すべては、最初のままなのだ。
私の中にエルクがいて、エルクの中にも私たちがいて
すべての生き物には、すべての人たちがいて、
ありとあらゆるもの、すべてのものに、私たちは、含まれているのだ。
私たちは一つなのだと。
私は毎日、エルクのことを思い出すと泣いてしまうのだけれど、
悲しいからではないのだ。
おまえと出会えたことが嬉しくて、ありがたくて
暖かいものがこみ上げてくるのだよ。
だから安心してくれていいよ。
生きることは素敵なことだと、エルクが教えてくれたから。
エルクが残してくれたものがあまりに大きくて
お礼の言葉もないけれど、エルク本当にどうもありがとう。