小林秀雄の言葉を年代順に集めた本が出版された。新書で756円と求めやすく、嬉しくなって買ってしまった。
やはり小林秀雄は面白い。すべての言葉が理解出来ることもないけれど、読んでいるだけで心地がよい。
分からないものを、分からないまま読む快楽がある。
格言集のようなものなので、どこから読んでも良いし、どこで終わっても良い。
ふっとした気分転換にページをめくったりする。日本で初めて「批評」という地平を開拓しただけのことはあって、一つずつの言葉に、芯が通っていて、その言葉には、覚悟のようなものを感じる。
やはり小林秀雄はいいな。この方の講演を記録したテープを聴いていると、学問をする人間の精神と志の高さを直接肌に感じることが出来る。もうこのよう存在の人間は生まれてこないかもしれない。
しかしこの本を小林秀雄が知ったら、きっと、怒るだろなと思う。
「ぼくの考えの断片を寄せ集めてもぼくの考えを知ったことにはなりませんよ。短い文章でもいいから、きっちりと読み込んで、そしてぼくという人間に触れて欲しい・・・・・」というような小言が聞こえてきそうで、それもまた楽しい。