エルクはスルリとすり抜ける

私たちのつらさも、悲しみも

エルクはスルリとすり抜ける。

「長くて4日、早ければ今夜にも」という獣医さんの言葉さへ

エルクはスルリとすり抜ける。

荒い息をしながら起き上がると、真っ先に水を飲む

庭に出て用を足し、おやつを催促してまた眠る。

エゴを持たないエルクには死の恐怖がない。

まるで優れた禅僧のようだ。一休のようだ。OSHOのようだ。

今もエルクは冷たい雨の中で用を足し、庭を一回りして、

おやつを催促してまた眠りに着こうとしている。

エルクの弱りきった心臓が止まるとき

エルクが失うものは、老いた肉体だけだ。

そのとき私たちはかけがえのないもの

愛おしいものを永遠に失う。

しかしエルクは永遠の別れも

私たちの思いも

すべてをスルリとすり抜けて

今を心地よく生きている。

コップの水が、海の水に混ざるように

エルクは、静寂の世界に旅立とうとしている。

私たちの人生を変えたこの犬を

ありったけの悲しみと感謝とともに見送りたい。

 

今、エルクの寝息を聞きながらこのブログを書いています。

私たちは、残された時間をエルクとサテで過ごします。

エルクに死が訪れた時、

私たちに必要なことは、十分に慈しみ感謝する時間です。

私たちをそっと見守ってください。

言葉ではなく、ただそっと見守ってください。