私はことさら桜を撮影することがない。
桜が咲けば美しいと思い、散れば美しいと思う。
道を歩くとき、空気を感じるとき、光に心が満たされるとき、カメラを向ける。
それが桜であることは少ない。
桜は春の象徴のようで、その概念を打ち破るほどの出会いをしていないのかもしれないし、私にそのような力がないのかもしれない。
春という季節を静かに見つめ、やり過ごしたいと思っている。
桜を見るとき、そっと息を吐きながら、小さな思いで見つめていたい。
春が深くなるほどに、晩秋への思いは募る。
人生の秋を迎えた身には、春は少し騒がしい。
カラーで桜の樹を撮影することは難しい。
モノクロームの桜が私の思いに少し近い。