東吉野村から大淀町へ引っ越して、犬達との散歩の風景も随分と変わった。
冷え込みの厳しい東吉野では、桜は、春の訪れを告げてくれる嬉しい花だ。
「あの山の麓の桜が一番に咲き、あの谷の桜が最後に咲く。そしてその頃には、ウグイが産卵する。だからあの桜をウグイつき桜と言うんだよ。」と老人が教えてくれた。
山に点々と咲く桜に混じってこぶしの花も咲く。私はここに居ますよというように、美しい花を咲かせる。
毎年同じように花が咲き、人は一つずつ老いてゆく。何も変わらないようで、すべてが変わっていく。
住宅街でも大淀町は自然が残っていて、散歩の道すがら誰が植えたのか、ゆきやなぎが咲いていた。
早く花が咲けば良いのにと思い、咲けば散らないで欲しいと思う。
この矛盾した思いに、無常という言葉を重ねる。
最近は、咲く花よりも散る花に心が動く。