海の近くの町

石原吉郎の「海を流れる河」の影響かもしれないが、

海と河の交わる汽水の町が好きだ。

 

空の下、河口が大きく拡がり、海へと流れ込む。

河の音が、海と交わる。

微かに波の音が聞こえる。

 

長い旅を経た山の水達は、ゆっくりと、ゆっくりと海水に溶け始める。

ここでは、すべてが遙かに遠い。

いつか私の息が途絶えるとき、

私の意識もまた、ゆっくりと大きな意識に戻っていくのだろう。

河の水が海に戻っていくように。

何故かすごく、ありがたいことだと思った。

 

人通りの途絶えた小さな町は、さび色に滲んで見えた。

ネガフィルムで撮影した。

時間までも写し止めたいと思ったから。

 

LEICA CL SUMMICORN-C