あこがれのルーシー・リーの回顧展が東洋陶磁美術館で開催されているので、久しぶりに大阪に出かけた。
東洋陶磁美術館はお気に入りの場所で、大阪でゆっくりとした時間が持てれば一番最初に訪れたいと思う場所の一つだ。
ここの常設の陶磁器が大好きで、吉野に住んでいても時々無性に訪ねてみたくなる所だ。
ルーシー・リーの作品を見ていると、心にさわやかな風が吹き、心が浮き立つ感じがする。
素敵な女性を思い浮かべると、ルーシー・リーの陶磁器に近いのかもしれない。
端正で美しく、モダンで控えめな優しさに溢れている。
しかし自己主張はしっかりとしていて、きっちりと世界と向き合っている。
一足早い春風を心に感じながら、幸せな気分でルーシー・リーの展示室を出た。
常設の展示室に入ると昔よく見た、陶磁器が並んでいる。
入り口付近に油滴天目 茶碗が置かれていた。小振りで美しい。
奥に進むと、高麗の青磁が眼に入る。
そのやさしさと美しさにため息が出る。魂が喜んでいるのが解る。
東洋陶磁には、神様が窯の中でいたずらしたとしか思えないものが数点ある。
少し歪んでいる姿が、なんとも美しく、人為を超えた力を感じる。
そして、包容力のある青磁の青に眼が喜んでいるのを感じる。
スージー・リーの作品は、芸術性の高さとモダンなデザイン、端正な美しさで私の感性を刺激し楽しませてくれた。
しかし、高麗の青磁は、私の魂を静かな喜びで満たしてくれた。
あの無名の美しさ。ただ美しいという理由だけで、どれだけの人の手を経てきたのだろうか。
今日初めて、私が東洋陶磁美術館が好きな理由が分かったような気がした。
私も何時の日か、魂に届く写真を撮りたいと思った。
数年ぶりに歩いた中之島は、なぜか切なかった。
午後3時を過ぎると太陽がビルの影に隠れてしまった。