写真は光を感じ、光を撮る。
その意味で、曇りの日は写真には向かないような気がする。
曇りの日に、写真を撮ることは少ない。
しかし、曇りの日に、カメラを手に歩くことがある。
自分のこころを抱きしめるようにゆっくりと歩く。
自分の中にある寂しいこころ、心細さをかみしめるように歩く。
フラットな光は、植物に安らぎを与え、木々を渡る風もどこかリラックスしている。
特別でない時間の安らぎ。
カメラを向ける世界のないくつろぎ。
いつもとは違う事物の姿が愛おしい。
写真的ではないのかもしれないけれど、安らぎに満ちあふれている。
明日になれば、この世界はまた光に満たされる。
光に向かい、光を受け入れるために、陰を作るために、
事物は曇りの日に少し休息を取る。
厚い雲の向こうには、光と宇宙がある。
そのことを信じて、自分を休める時間。
だから、曇りの日の写真はそっとシャッターを押す。
休息を妨げないように。