蝉の声が弱々しい。
8月1日の太陽は隠れて、遠くの青空と雨を含んだ雲が交互に窓をかすめていく。
こんな日は仕事をしながら、気持ちは彼方へと逸れていく。
明るさへ、静けさへ、身体へ、山之口獏へと。
獏さんの「座布団」という詩を思い出している。
「座布団」 山之口獏
土の上には床がある
床の上には畳がある
畳の上にあるのが座布団でその上にあるのが楽といふ
楽の上にはなんにもないのであらうか
どうぞおしきなさいとすゝめられて
楽に坐ったさびしさよ
土の世界をはるかにみおろしてゐるやうに
住み馴れぬ世界がさびしいよ
この詩は、友人がくれた高田渡の歌で知った。
「楽に座ったさびしさ」
この言葉を知って、語らなくなった言葉が増えた。