川上村へ大径木を見に出かけた。
山道をゆっくりと登る。
事前に注意を受けていたのだが、道の途中にヒルのいるところがある。
立ち止まったり、ゆっくりと歩くとヒルが長靴を登ってくる。
その速度は思っているよりも速い。
泉鏡花の高野聖にヒルにおそわれる話が出てくるが、それを思い出してぞっとした。
だがこのヒルも自然なのだ。
森を美しいという、これも自然。ヒルの動きも自然。
私は森を見て、ヒルを遠ざける。
自分の都合で自然を分別しているのだと改めて知った。
美しい川上の森。吉野には珍しい原生林の雰囲気がある。
優しい光が森に閉ざされている。