遠くの山で積雪があり、その雪がゆっくりと里へと降りてくる。
冬至を二日後に控えて、初積雪があった。
冬の深まりと、陽の復活の冬至が交錯して、季節の移り変わりというものを深く感じる。
冬至を過ぎると畳の目一つ分づつ、陽が長くなっていくといわれている。
来ては去り、去っては来る巡りに、「それもまた過ぎ去る」というブッダの言葉が心に浮かぶ。
「それもまた過ぎ去る」のなら、その瞬間、瞬間に生きる以外に方法はなさそうだ。
少し前に撮影した霜の写真。光に溶ける霜が愛おしい。
光と風の交わる場所で
国道から少し入ったところに小高い山がある。
急な坂道を上ってくると空き地が拡がり、荒涼とした風景の頂上で道が交差している。
この場所に差し掛かると、いつもクロスロードという言葉が浮かぶ。
クロスロード、交差点。
普段立ち止まることのない道路の真ん中に立って、周りを見回す。
どちらへも行けるけれど、どちらへも行くことが出来ない。
そんな思いに囚われながら、車に戻る。
いくつものクロスロードの真ん中に立って、私はどのように道を決めてきたのだろう。
音楽が上手くなりたいために、クロスロードで悪魔と契約を交わしたギターリストの伝説があることを思い出した。
今度、人生のクロスロードに出会ったとき、
思い切って道路以外の道を歩いてみよう。
例えそこが荒野であっても。
友人がプレゼントしてくれたカーステレオに、ジャニス・ジョプリンのCDを入れて一人で車を走らせた。
私はいつも自由を求めていた。
しかし自由は、求めて手に入るものではないことを、最近になって知った。
求めて手に入るもので、自分を満たすものが無いことも少し分かった。
大切なことは、手放すことだと気づいた。
私は、ジャニス・ジョプリンが好きで、彼女のことを思うと胸が切なくなる。
ジャニスの歌を聴くときは、幌を上げて、オープンな空気の中でワインディングロードを走らせる。
カーステレオからMe And Bobby McGeeが流れる。
「私は、赤い汚れたバンダナからブルーハープを引っ張り出した。
それを低く吹くとボビーはブルースを歌った。
ワイパーが拍子を取り、私は片手でボビーの手を握った。」
「自由を違う言葉で言えば、何も失うものが無いと言うこと、
何もない、わかる?、もし自由がなければ何もない」
ジャニスは、きっと自由よりも人の愛が欲しかったのだろう。
二十歳の頃、私は狂おしく自由と自分を求めていた。
今、私が二十歳なら、一体、何を求めるのだろう。