小樽へ向かうフェリー

夜の港にフェリーが着岸する。
フェリーターミナルから、微かに人のざわめきが聞こえる。
乗降する車がタラップを踏む音が響き、フェリーのエンジン音が港に響いている。

遥かむかし、高校2年生の私は、このフェリーで小樽へと向かった。重油の匂いと、振動、湿った風だけが思い出された。
当時の記憶があまりに不鮮明なので、思い出すことを諦めて、ゆっくりと離岸するフェリーを眺めていた。