吉野山桜行

とりたてて桜が好きなわけではない

蓮にくらべれば、地味な花なのだと

ただ風に吹かれて桜を見ると

いつも過去が駆け足で

私の今を追い越していく

 

 

石牟礼道子を悼む

言葉の持つ重み、強度を教えてくれたのは、石牟礼道子さんの作品だった。

私は水俣病は現代の試金石だと思っている。

この公害をどう考え対処するかで、人間の将来がかわるような気がする。

この病の深さ、つらさを自分の言葉できっちりと紡ぎ出した石牟礼道子は神の依り代だろう。

その石牟礼さんに

「祈るべき天とおもえど天の病む」

という句がある。

もう私たちの天は本当にほんとうに病んでしまったのだろうか。

 

仕事が遠い

仕事が遠い。

電話一本で引き戻されるが、

また遠ざかっていく。

気分を変えるために、

海を見に出かけた。

思っていたよりも海は近い。

冬の日射しの暖かさが心地よい。

海の近さに反比例するように

仕事との距離が遠のく。

感じていたよりも仕事が遠い。