空があまりに透明なので
車を降りて深呼吸をする。
身体の中心から湧き出すように、「満たされ」が溢れる。
ゆっくりと伝い昇る。そして拡がる。
この光、この風、雲に草花
これで十分という思い。
全てが透明に、そして満たされた一日
私が歩けば地球が廻る
半歩先行く私が見える
光と風の交わる場所で
夜来の風雨が過ぎ去った。
何事も無かったかのような曇り空。
台風は遠くへと飛んで行った。
台風は去ったけれど、私は去らなかった。
なぜ、私だけが去らなくて、台風だけが去るのだろう。
台風が去らなくて、私が去ることも出来るのかな。
そうか、台風からすれば、私が去っていったのだ。
しかし、私が去るというのはどんな感じだろう。
去っていく私はどんな風に見えるのだろう。
時間が経つというけれど
経つのは時間ではなくていつも私だ。
未来が来るというけれど
私は未来を見たことがない。
過去が在ったというけれど
私は過去を確かめに行くことが出来ない。
何かをひどく勘違いして、それを時間と呼んでいるような気がする。