路地を歩く

生まれ育った路地を歩くと軽いめまいを覚える。

路地の奥に見覚えのある家があり、知らない人たちが話をしている。

周りの風景が呼吸でもしているかのように、膨張したり収縮したりしている。

私が歩いたという痕跡は何処にもない。

私がここにいたという痕跡は何処にもない。

ただ私の記憶があるだけ。

しかし記憶に確かなものなど何もない。

黄昏時に知らない町を歩いてると、

ふっと、私はもういないのだという思いに捕らわれる。

自分がこの世にいないのに、それが分からなくて彷徨っているような気がする。

この路地も私には、もう現実では無いのかもしれない。

 

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写真は、シャッターが切られた瞬間に、風景が入れ替わる。

同じ風景を二度見ることは出来ない。

その場所に、同じ自分を留めることは出来ない。

写真は記録ではないのかもしれない。

記憶の凝縮かもしれない。

あなたが微笑めば

人として生まれてきて、最高に楽しいことの一つは

人の微笑みに出会えることだ。

天の祝福もありがたいけれど、私には遠すぎる。

身近な人の微笑みが、何より嬉しい。

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写真は4月末に撮影したもの。夕暮れ時に月が微笑んでいた。

私の好きな歌に「When You’re Smiling(君ほほえめば)」というナンバーがある。

敬愛するビリーホリデーが少し軽めのテンポで歌う。

車の中では、アン・サリーのヴォーカルで聞くことが多い。

When you’re smiling, when you’re smiling,
the whole world smiles with you.

When you’re laughing, when you’re laughing,
the sun comes shining through.

But when you’re crying, you bring on the rain.
So stop your sighing.
Be Happy again.

Keep on smiling ‘cause when you’re smiling
the whole world smiles with you.

君がほほえめば世界は君にほほえむ。

君が笑えば、太陽が輝く。

しかし君が泣くと雨が降ってくる。
ため息をつくのをやめて、微笑んでごらん。

だって、君が微笑めば、世界のすべてが、君に微笑むから。

写真と言葉

私は写真に多くの言葉を費やしてきた。

しかし言葉に終着点はなく、満たされることはなかった。

自分の「表現」というものを手にすることが出来なかった。

そして写真を諦めた。

理論を捨て、言葉を捨て、表現を捨てた。

そして吉野へ引越しをした時、ふとしたきっかけで写真の楽しさと出会った。

私は写真の持つ困難さを手放し、新たな感覚と出会う装置としてカメラを使い始めた。

今、写真を撮ることは私の楽しみで、私を自由にする。

光を感じ風を見ることが出来る。

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洞川を渡る心地良い風と空

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雑木林を揺らす風と朝の光

自分の眼と心が愉しまない物や事に別れを告げよう。

困難さを友として人生を歩む人たちと袂を分かとう。

これからは、愉快を生きよう。

この蝶ほどには、自由ではないけれど

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